2024.12.09
株式会社ことろど 豊前しごと図鑑編集長 吉田翔太さん
高専卒業から17年間、技術職として働いた九州旅客鉄道株式会社(以下、JR九州)を退職し、株式会社ことろどに入社した吉田翔太さん。長年福岡市で暮らしていましたが、転職をきっかけに地元である豊前市に戻ってきました。
「専門技術を磨き、社内でも評価されてやりがいもあった」という仕事を辞め、全く異なる新しい仕事を始めた理由は何だったのでしょう。その背景には、人と人とのつながりが生み出すパワーが潜んでいました。
キャリアの迷いを乗り越え、導かれるように豊前市へ
コロナ渦で会社の業績が落ち、キャリアに迷いが生じた、と語る吉田さん。
「右肩上がりだった業績が一気に転落した時に、会社に守られてのうのうと生きている自分に危さを感じました。技術はそのうち陳腐化するし、労働市場に出た時に価値ある自分になるにはどうすれば良いか、真剣に考え始めました」
その時、目にとまったのが社内のビジネスコンテスト。「ゼロからイチを生み出す経験は一生使えるはず!」と思い、応募を決意しました。
それを機に、ローカルに特化した事業構想支援スクールに参加。人との出会いを重ねる中で、事業のタネを見つけます。そして、さらなるヒントを求めて地元の豊前市を訪れたことが、その後の転機となりました。
「ZigZagで開催されたイベントに参加した際、様々な人が『豊前市のここがすごい!』『こんなことをしたくて豊前に来た』と熱弁していて『ここ20年程で賑わいが減ったように見える豊前にも、こんなに熱い思いを持った人がたくさんいるんだ』と衝撃を受けました。その時に『ここで、この人たちと一緒に仕事したい』という気持ちが生まれたんです」
その後、縁あってことろどの代表から声をかけられ、転職を決意。
「自分のキャリアについて、明確な目標はありませんでしたが、迷いながらも行動し続けたことで人とつながり、今ここに立っています。『とりあえず動いて、人と会うことで新しい何かが生まれる』という姿勢を今も大切にしています」
現場のリアルな声と、細やかなサポートが強みの「豊前しごと図鑑」
現在、吉田さんが携わっているのは、求人サイト「豊前しごと図鑑」の運営。豊前市の企業の魅力を掘り下げ、求職者とのマッチングをサポートするプロジェクトです。
求職者にとって、どんな職場環境でどんな人たちと働くのかは大きな関心事。IT化、新規事業への取り組みなどの「外からは見えづらいこと」や、働く人のリアルな声を届けることで、求職者と企業の橋渡しをしています。求職者からの問い合わせや、応募の一次窓口を吉田さんが担っているところもポイントです。
「『人手不足で、担当者が色々兼務しながら採用活動をしている』『事務仕事に割けるリソースが無い』といった企業は多く、その結果、応募者への最初の連絡が遅れてチャンスを逃す、といった事態も起こります。そこで、私が窓口になって応募者の気持ちが熱いうちに最初のコミュニケーションを取り、企業へおつなぎします。応募者の離脱を防ぐべく、忙しい企業に代わって初回の対応を行うところも『豊前しごと図鑑』の強みの一つです」
「楽しみながら豊前市の未来を共に作る」仲間を求めて
地元に帰ってきて働くうちに、気持ちの変化もあったのだとか。
「『豊前のために何かしたい』というぼんやりとした思いからスタートしましたが、次第に『この企業のこの事業を応援したい』『この人のために力になりたい』と焦点がぐっと絞られていくような感覚がありました」
具体的に相手の顔を思い浮かべながら仕事に取り組めることが、大きなやりがいにつながっていると言います。
吉田さんの目標は、「豊前しごと図鑑」をきっかけにU・Iターンする人を増やし、豊前市の未来について共に語り、取り組んでいける仲間を増やすこと。
「地域のためとか、経済発展のためとか、大義名分はありますが……(笑) 何より、仲間が増えてそれぞれが力を出し合い、協力して動いていけたら楽しいじゃないですか。それが結果的に豊前市を賑やかにすることにつながると信じています」
前職時代に構想をたてた宇島駅周辺の活性化事業は、形を変えて再び動き出したそう。
地域の一プレイヤーとして、たくさんの仲間と共に走り続けています。